■夫■立 助教鳥取大学・衣立夫助教で博士後期課程を過ごし、高熱伝導率・低熱膨張係数を有するアルミ基炭素系複合材料の研究・開発を行って、博士(工学)を取得しました」。 「2019年4月からは大学院 工学研究科 機械宇宙工学専攻の博士研究員としてそのまま研究を続け、2020年4月には工学部 機械物理系学科の助教に採用されました。現在は研究のほかに学部1年の物理実験の授業も担当しています」とこれまでの経緯を語ってくれた。イリフ夫■12研究室訪問5鳥取大学 工学部 機械物理系学科衣 立北京理工大学から鳥取大学へ 天田財団の2020年度の「奨励研究助成(若手研究者枠)」に塑性加工分野で採択された鳥取大学 工学部 機械物理系学科 材料工学研究室の衣助教は、中国・遼寧省出身。2013年6月に北京理工大学 工学部を卒業し、同年10月に研究生として鳥取大学 工学部の信頼性・設計工学研究室に留学。2020年4月からは機械物理系学科 材料工学研究室の助教に就任した。 衣助教は「自動車製造を中心に、信頼性設計の分野で世界的に見ても優れた日本の管理手法や技術を学ぶことが、学生時代からの希望でした。2013年に鳥取大学に入り宮近幸逸教授、小野勇一准教授(現・教授)のご指導をいただいて研究をはじめました。しかし、翌年に宮近教授が病に倒れ、亡くなってしまわれました。指導教員がいなくなって、研究室自体の存続が危ぶまれる状況でした」。 「そんなときに相談に乗っていただいたのが、鳥取大学大学院 工学研究科の陳中春教授でした。そして陳教授がおられる材料工学研究室に移ることを決心。2014年4月から2016年3月まで鳥取大学大学院 工学研究科 機械宇宙工学専攻として博士前期課程、2016年4月から2019年3月ま半導体集積回路の発熱を軽減するヒートシンク 衣助教の研究は、黒鉛や炭素繊維など高熱特性を備えている素材をアルミに添加することにより、アルミの性能を向上させ、ヒートシンクとして使うことで、将来的には半導体集積回路の大きな発熱量を軽減することを目指している。 近年、デバイスの小型化や性能向上にともない、半導体高集積回路の高速化・高集積化が加速している。電力密度が上がることで発生する熱量が増えるため、高熱伝導特性を有する軽量な放熱材料の開発が求められる。放熱材料に必要な特性は、高い熱伝導率のほかにSiなどの半導体素子にちかい低熱膨張係数を有することが挙げられる。 そうした素材のひとつにカーボンナノチューブ(CNT)やカーボンナノファイバー(CNF)がある。2つとも高い強度と優れた電気伝導性、熱伝導性を持つ。また、繊維の長手方向に負の熱膨張率を有することから、アルミニウム(Al)との複合化により、効果的に熱伝導率や熱膨張係数を改善することが期待できる。しかし、炭素系ナノファイバーを金属中に均一分散させることは非常に難しい。 一方、黒鉛は六方晶系の層状結晶構造を有するため、熱的・電気的性質などに大きな異方性が存在する。 これまで、ホットプレスや鋳造、加圧含浸などの技術によるAl/黒鉛複合材料の創製に関する研究が各所で報告されているが、黒鉛の配向性や黒鉛とAlの界面で炭化物が形成されるなどの問題があった。「熱間押出し加工による高性能ミルフィーユ構造のAl/黒鉛複合材料の創製」半導体集積回路が発生する熱量の軽減を目指す
元のページ ../index.html#12