❶❶❷❷❶成形実験を行う塑性加工試験機/❷成形現象の予測などを行うCAE室/❸成形現象の観察・計測を行う3Dモーション・変形解析システム/❹光学式プレス成形解析システム❸❸今回助成を採択された研究に参加しているメンバー❹❹ンプレスで成形するときの押し加減や、熱間鍛造の搬送の時間の差といった人手に頼る作業はバラツキが生じやすいということです。そういった作業を自動化すれば、たしかにバラツキを減らすことはできると思いますが、技術者の技術・技能や周囲環境の変化まですべてを反映できるかというとそうではありません。そういった部分まで自動化するには、プレス機自らが考えて状況に応じて動くようにする必要があります」。 「現在はまだプレス機の仕様について設計を練っている段階です。装置の方向性を決めるという意味では今後の実験の基盤となるとても大事な部分です」。 「3年間という助成期間でいきなり実用段階まで進めることは難しいと思いますが、プレス機の仕様や成形法に関する考え方、注意点などを示す指標になるような研究にしたいと思っています」(四宮主任研究員)。53段階に分かれた研究計画 今回の研究は3つの段階に分けて進められる計画だ。 第1段階では「環境や条件からプレス機自身が判断し、動きを決める機械学習可能なプレス機への改造」を行う。まずは成形中の状況を各種センサーで計測し、取得した数値からプレス機自身がその後どのような動作をすべきかを選択できる仕様に改造する。ニューラルネットワークを用いた学習プログラムを作成し、実験およびシミュレーションから得られた情報(教師データ)を用いて機械学習を行う。学習済みデータや技能者の知見を入れた情報をプレス機に送信することで、状況判断が可能なプレス機となり、AIを使った知能化プレス技術の研究を推進できる。 第2段階では「冷間鍛造での成形精度向上に関する知能化プレス技術の検証」を行う。技能者の経験をもとに教師データを作成し、教師データから学習した学習済みデータを用いて、冷間鍛造での成形精度の安定化をはかる。 第3段階では「熱間鍛造での組織予測シミュレーションを活用した学習データの取得と品質の安定化」を行う。熱間鍛造は、周囲の環境や作業者のオペレートの影響が大きい。環境、金型および被加工材の表面の温度計測により、成形品の硬さや金属組織などを学習済みデータから予測し、その予測結果からプレス動作を判断し実行する知能化熱間鍛造技術を確立する。また組織予測までを含めたシミュレーション技術を活用して、プレス機自身が機械学習用の教師データの補足を行い、品質が安定する成形条件を決める。塑性加工分野をもっと盛り上げていきたい 「塑性加工分野を研究している研究所や大学の数が減少してきています。すでに各地域にひとつあればいいといった状況で塑性加工分野が元気を失っていっているように感じます。さいわい人工知能や機械学習などの新しい分野は注目を集めやすく、人に知ってもらいやすいテーマでもあります。今回の研究が上手くまとまっていけば、研究所のYouTubeチャンネルで動画配信するなど、全国へ向けて研究成果をPRすることも視野に入れて考えています。そういった活動をとおして塑性加工分野をもっと盛り上げていきたい」と、四宮主任研究員は塑性加工分野の今後についての思いを語っている。
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