東京大学大学院 工学系研究科の伊藤佑介助教クス材などの加工について研究する中でSiCナノチューブの合成に関連する研究をライス大学で行いました。博士課程ではガラスのレーザ加工を研究するようになりました。その途中で、サンパウロ大学と交流されている先生を通して、サンパウロ大学で勉強したい学生を募集する学内公募がありました。応募者が私一人だけというチャンスに恵まれて短期留学、レーザ加工の最適化シミュレーションを学ぶことができました」。 「現在、ガラス材料に微細加工を施す技術としてフェムト秒レーザ加工が注目されており、加工性能の向上を目指した研究が盛んに行われています。しかし、ガラスのフェムト秒レーザ加工は加工速度が極めて遅いということと、加工時にクラックができるために精密加工が困難という2つの課題があり、実用化に大きな障壁がありました。その中で私たちの研究ではガラスの微細精密加工を、従来の5000倍の速度で実現するレーザ加工技術の開発に成功しました」(伊藤助教)。14研究室訪問6東京大学大学院工学系研究科 先端加工学研究室伊藤 佑介 助教 チャンスを活かしてレーザ加工の研究に挑む 東京大学大学院 工学系研究科 先端加工学研究室の伊藤佑介助教は、天田財団の令和2年度「奨励研究助成(若手研究者枠)」にレーザプロセッシング分野で採択された。研究テーマは「透明材料のフェムト秒レーザ加工時の温度分布の超高速精密計測」。 伊藤助教は2009年4月に東京大学 工学部機械工学科に入学、切削加工など精密機械工学分野の研究を行った。2013年10月から2015年9月までは東京大学大学院 工学系研究科機械工学専攻 修士課程、2015年10月から2018年12月までは東京大学大学院 工学系研究科 機械工学専攻 博士課程を経て博士(工学)を取得した。 修士課程在学中の2014年1〜9月には米国・ライス大学 材料科学科に留学し、SiCナノチューブ合成について研究した。また、博士課程在学中の2016年10〜11月にはブラジル・サンパウロ大学への短期留学で、レーザ加工の最適化シミュレーションの研究に従事した。さらに2017年9月から2018年3月までは米国・マサチューセッツ工科大学で「超高速圧力分布イメージセンシング手法の開発」に関わる研究に従事するなど、活発で好奇心も旺盛だ。 「学部在学当時は機械工学科で切削加工プロセスの研究を行い、その一環としてSiC(炭化ケイ素)などのセラミッ課題を解決するアイデアの提案をモットーに研究を続ける 伊藤助教が所属する「先端加工学研究室」は、東京大学大学院 工学系研究科 機械工学専攻の杉田直彦教授を中心に、最先端の生産加工技術、工作機械技術、レーザ加工技術、医療応用技術を構築することと、それを最先端の種々の分野に適用することを目的とした研究を行っている。現象を可視化することで、物理モデルの構築を可能とし、その結果に基づいて、課題を解決するアイデアの提案をすることをモットーとしており、具体的には①生産加工・工作機械、②レーザ加工、③医療応用、④スマート工場の4つの分野を研究対象としている。 研究室には杉田教授のほかに特任助教1名と伊藤助教、主任研究員1名、技術職員と事務職員、中国・広東工業大学出身の研究員が1名ずつおり、スタッフは計7名。これに対して学生は博士課程7名、修士課程12名、学部4名、中国からの研究生1名の計24名となっている。研究「透明材料のフェムト秒レーザ加工時の温度分布の超高速精密計測」垣根を超えたオープンな発想で共同研究を進める
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