東京大学大学院 工学系研究科の古川克子准教授(後列中央)学大学院 博士課程 医学系研究科を修了し博士(医学)を取得、博士課程在学中の1997年には科学技術振興事業団 科学技術特別研究員となった。 2004年に東京大学大学院 工学系研究科 機械工学専攻の助手、2005年に東京大学大学院 工学系研究科 機械工学専攻の講師、2007年に産業技術総合研究所の客員研究員、理化学研究所の研究員に就任。2007〜2017年には東京大学大学院 医学系研究科・新領域創成科学研究科の非常勤講師、2009年からは現職である東京大学大学院 工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻・機械工学専攻の准教授となった。 また、2011年にはイギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンにも在籍し、2013〜2015年には客員研究員となった。10研究室訪問4東京大学大学院 工学系研究科古川 克子 准教授機械工学に基づいた再生医療・医工学を研究 東京大学大学院 工学系研究科の古川克子准教授は、天田財団の令和2年度「一般研究開発助成」にレーザプロセッシング分野で採択された。研究テーマは「2光子レーザ・単光子レーザによる高速3次元光造形法の開発と再生医療への展開」。 古川准教授は機械工学に基づいた再生医療・医工学の研究を行っている。特にせん断応力・引張応力・圧縮応力・静水圧などが存在する力学環境場で再生血管・軟骨・子宮を培養するデバイスの構築や、血管シミュレータ内での血球成分の動的な挙動のリアルタイム解析、細胞へのトポロジカルな刺激と分化の関係を力学の視点から解析するための新しい造形技術の開発・研究を進めており、これらの研究を通じて生物学的な性質に優れた再生臓器の開発や、各種疾患の発症のメカニズムの解明を目指している。研究をはじめたきっかけ 古川准教授が機械工学に基づいた再生医療・医工学の研究をはじめたきっかけは、学部在学中に人工肝臓の設計に携わる研究に参加したこと。その後、機械工学と化学工学の知識を背景に基礎医学の研究を行っていた大学院に入学し、学部では工学の基礎を学んでいたため、修士課程では医学の基礎を勉強した。その後、1998年に筑波大特許申請中のデュアルレーザ式光造形装置 今回採択された研究は「2光子レーザ・単光子レーザによる高速3次元光造形法の開発と再生医療への展開」。 本研究では古川准教授が特許申請した「デュアルレーザ式光造形装置」を作製する。この装置はレーザの造形スポットが大きいため構造物の高速造形が可能なUVレーザと、ナノレベルの造形が可能な2光子レーザを複合化した新しい3次元光造形装置を組み上げたもので、大きな外部形状および微細な表面・内部形状を有する3次元構造の造形を可能とする。 また、高齢者で問題になっている骨粗しょう症の改善を目指した再生骨の開発を目指した研究を行う。正常な骨組織では骨様の細胞外マトリックスが高密度に存在するが、骨粗しょう症を発症した状態では骨様基質がやせ細り、その密度も極端に粗になるなど特徴的な構造を呈する。 粗になった骨様マトリックス構造が骨内の骨を壊す破骨細胞への幹細胞分化を促進し、骨をつくる骨芽細胞・骨細胞への分化能を下げ、骨粗しょう症の悪化のサイクルが起こる可能性がある。本研究では高齢ラットの骨粗しょう症部位に正常な骨と同様の構造物を光造形法で作製して注入することによる効果を検証することを目標としている。2光子・単光子レーザによる高速3次元光造形法の開発と再生医療への展開独自開発した光造形装置で骨粗しょう症の原因解明に挑む
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