天田財団ニュース No9
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19つ、学部4年生10名、2部学生1名の計48名が在籍する学内最大の研究室となっている。 研究室では生産機器(工作機械、工具など)で生じるトライボロジカルな諸現象や、加工表面の物理的・化学的変化の根本的な理解とそこから得られる知見を生かした新しい生産機器・生産プロセスを開発。「生産加工は実際に製品をつくり出す手段であり、それを担う企業と協調しながら研究活動することが重要である」という糸魚川教授の考えから、数多くの企業や研究機関と連携しながら研究を遂行している。 「私の研究は超短パルスレーザを利用し、その高い潜在能力を持つ膜の工業的な利用価値をいっそう向上させることです。一方で、DLC膜は優れたトライボロジー特性を持つため、自動車の摺動部へ適用することで低燃費化が期待されています。そこで、光学の手法による潤滑油中の添加剤などのDLC膜への吸着過程の解明についても研究しています」と語っている。❶❶❶フェムト秒レーザ加工機LIGHT CONVERSION PHAROS/❷フェムト秒レーザ加工機IMRA AmericaD-1000/❸マシニングセンタM140X2❷❷生産機器研究室の2019年夏旅行の集合写真❸❸北京・清華大学から名古屋大学へ 劉助教は中国東北部の遼■■■■■■■■寧省出身。遼寧省は瀋■■■■陽、大連といった工業都市があり、日系企業も数多く進出している工業地域。ご両親はいずれもエンジニアとして企業に勤務、その影響もあって子どものころからものづくりに興味を持ち、北京にある清華大学へ入学。2015年9月に清華大学 工学研究科環境工学 修士課程を修了、同年10月に名古屋大学大学院 工学研究科 機械理工学専攻 博士後期課程に入学。2018年9月に博士号(工学)を取得し、同年10月から名古屋工業大学 電気・機械工学科 助教に就任、現在に至っている。 所属する生産機器研究室では糸魚川教授の指導で「短パルスレーザ照射に基づいた炭素系硬質膜の摩擦摩耗特性の改善」「短パルスレーザ照射を利用した切削工具刃先成形技術の開発」「DLC膜表面における潤滑油添加剤の吸着過程の解明」などの研究を行っている。 劉助教は「省エネルギー化・長寿命化に向けて、機械部品の摩擦と摩耗の制御がより必要となっています。炭素系硬質被膜はダイヤモンドとグラファイトの中間構造であり、耐摩耗性と低摩擦特性の両方を持ち、さらに化学的安定性かつ高密着性・生体親和性などの特性を有しており、幅広い分野で応用されています。人工的に作製されたダイヤモンドの一種であるCVDダイヤモンドは安価かつ高硬度、高成形性などの優れた性能を持つコーティング材として切削分野で注目を集めています」。自動車や工作機械の産業がさかんな名古屋へ 「清華大学在学中から日本のものづくりに関心がありました。なかでも自動車産業や工作機械産業がさかんな名古屋地区で勉強したいと考え、名古屋大学大学院 工学研究科 機械理工学専攻の博士課程に入りました。現在のポストはテニュアトラックの助教です。着任から4年後にテニュア審査があり、それに合格すれば任期解除後も大学に残れます。これからも日本で研究を続けていきたい」。 「糸魚川教授の研究室はオープンで産学連携を重視しています。そのため研究実験装置も充実していて、ナノ秒レーザ、フェムト秒レーザなどの短パルスレーザ装置がいくつもあり、研究環境には満足しています。今年度前期は新型コロナウイルス感染症の影響で在宅勤務となり、研究室に来られない状態でした。現在は感染防止対策をして研究室に来ることができるようになり、私が指導する学生とともに、新しいものづくり技術の創出を目指しています」と劉助教は語っている。

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