18適用することで刃先丸味の課題が克服できるものと期待されている。そこでフェムト秒レーザ加工の高い刃先成形性と、加工面の表面改質効果を同一光学系で行うtwo-step加工の開発によって、CVDD工具が持つポテンシャルを十分に発揮させ、鋭利な刃先を成形する(高い切れ味を得る)とともに、表面改質効果により表面の硬質化(耐摩耗性の向上)を目指す。名古屋工業大学 電気・機械工学科 機械工学分野の劉暁旭助教研究室訪問6名古屋工業大学電気·機械工学科 機械工学分野劉リュウ暁ギョウキョク旭 助教 フェムト秒レーザの非熱加工と高精度加工を利用したCVDD工具の刃先創製 天田財団の2019年度「奨励研究助成(若手研究者)」にレーザプロセッシング分野で採択された名古屋工業大学 電気・機械工学科の劉■■■■■■■■■暁旭助教の研究テーマは「フェムト秒レーザを用いた多結晶CVDダイヤモンド・コーティング工具の高機能刃先創製」。本研究はPLG(Pulse Laser Grinding)加工において、工具の刃先の鋭利さと加工面の品質を両立することを目的として、フェムト秒レーザの非熱加工と高精度加工を利用し、CVDダイヤモンド・コーティング工具(以下、CVDD工具)の刃先創製を行う。 近年、安価かつ高硬度、高成形性などの優れた性能を持つCVDD工具の切削分野への適用が進められている。CVDD工具の適用範囲を拡大する際に課題となるのが、成膜時に生じる刃先丸味が工具の切れ味の低下を引き起こすことである。切れ味の低下は切削抵抗の増加、摩耗の増大、被膜の剥離を生じさせるため鋭利な刃先を成形する加工技術が求められている。 一方、短パルスレーザは材料硬さの制約を受けにくく、非接触な加工が可能であり、硬脆材料であるCVDダイヤモンドであっても鋭利な刃先が成形できるという利点がある。したがって短パルスレーザ加工をCVDD工具の刃先成形へCVDD工具の機能性向上を実現する 研究期間は以下の3つのフェーズに分けて研究を行う。 フェーズ1の「CVDダイヤモンド膜の表面改質効果におよぼすレーザ加工条件の影響の調査」では、フェムト秒レーザ加工機を使用して、CVDダイヤモンドの表面改質に必要なレーザフルエンス、パルス幅などを調査する。表面改質効果の評価は仕上げ面のラマンスペクトルからダイヤモンドのピーク強度変化(結晶性向上は硬質化と等価である)を指標とする。また、そのGピークシフト量とID/IG比の変化およびXRD測定結果から内部応力の変化と、その局所化を評価する。 フェーズ2では「CVDD工具の機能性向上を実現する最適なレーザ加工条件の探索」を行う。切削実験や硬さ試験、膜内部応力分布の測定、有限要素法での逆解析と組み合わせることで、切削性能を実現するために最適なレーザ加工条件を実験的に調査する。 フェーズ3では「刃先成形と表面改質を両立するtwo-step加工の提案とその切削性能評価」を行う。そして、トライボロジーと機械加工に関する知見を融合させた切削工具成形技術の提案を行い、さらに実用性を意識した実践的な高付加価値短パルスレーザ加工手法の提案を行う。48名が在籍する生産機器研究室 劉助教が所属する生産機器研究室は、糸魚川文広教授、樋口和夫特任教授のほかに早川伸哉准教授、前川覚准教授、劉助教、特任研究員1名、秘書1名、技術補佐員3名、博士課程5名、修士M2とM1がそれぞれ11名ず新しいものづくり技術の創出を目指す炭素系硬質被膜の表面機能創製フェムト秒レーザを用いた
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