天田財団ニュース No9
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17存し、厚さのある試料や複雑形状では高減衰能特性の付与が困難とされていた。 本研究は、金属3D積層造形装置の特長を活かした選択的レーザ融解法を用い、試料の造形条件を検討し、高減衰能特性を有したアルミニウム合金の創製を行うことを目的のひとつにしている。一般に高減衰能特性を付与させると、材料内部には多くの欠陥が存在する場合があるため、金属組織学的知見からアルミニウム合金の組織制御について考察するとともに、キャビテーションを用いた表面改質技術を用い、強度の向上をはかることを検討する。 研究スケジュールとしては、金属3D積層造形装置を用いて試験片を製作し、固有減衰性能を算出。その後、引張試験を行い、高減衰能特性と引張強さの関係を解明する。また、試験片の表面改質を行うためにキャビテーション(気泡)の崩壊圧力を利用したキャビテーション加工を行う。これによって高減衰能特性に加え、強度に優れたアルミニウム合金の創製を目指す。那郡阿智村の出身。生家が縫製業を営んでいる関係で工場で働くご両親を見て育ったこともあり、小さい頃からものづくりが好きだった。学部、修士・博士後期課程まで過ごした諏訪東京理科大学では電子材料や機械材料について学んだ。その後、近畿大学では金属3D積層造形法に関する国のプロジェクト「TRAFAM」で金属3D積層造形装置の研究開発と、材料ごとのレシピづくりを担当。山口東京理科大学(現・山陽小野田市立山口東京理科大学)では、新しいキャビテーション加工技術を学び、これまでにも多くの研究助成を受けた。 助教の任期5年の間に結婚し、研究職のご主人の勤務地が名古屋市だったことから生活の拠点を愛知県に移し、ご主人の上司からの支援もあって、2019年4月に岐阜工業高等専門学校に移籍、現在に至っている。 島本(田中)准教授は「これまで国内外のさまざまな研究分野の先生方にご指導をいただいたおかげで、今の自分があると感謝しています。自分を育ててくださった周りの方々への感謝を忘れずに、今後も若い世代への教育や、ニーズに合わせたオーダーメイドの材料研究に取り組んでいきたい」。 「社会で役に立つものづくりを目指しているので、産学連携にも力を入れており、昨年度の技術相談件数は学内No.1となっています。研究内容に関心を持ってくださる岐阜県や愛知県の製造企業様も出てきているので、これからはさらに実用性のある研究課題に挑戦していきたい」。 「材料学研究室はまだできたばかりの研究室です。装置が少なく、他研究機関で借りられる設備も限られているので、天田財団の助成は本当にありがたい」という。 島本(田中)准教授は結婚後の研究活動において新姓と旧姓のどちらを名乗るかで悩んでいた。その時、ご主人とつながりがあった米国の女性研究者の話を聞き、旧姓をミドルネームに入れ、「島本(田中)公美子, Kumiko Tanaka Shimamoto」として併記することにした。これにより研究分野でのプレゼンスを担保できると考えた。 「パスポートの特記事項にも記載していただけるので、これからご結婚をされる研究者や技術者の方に選択肢の1つとして知っておいていただければ」(島本(田中)准教授)。❶❶❶材料学研究室の様子。まだ新しい研究室のため装置は少なく、他研究機関の機器を利用・借用することも多い/❷天田財団の助成金で購入したダイアフラムポンプ/❸SEM、XRDなどの機械が並ぶ岐阜工業高等専門学校の機器分析室❷❷❸❸新型コロナウイルス感染症の影響 しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、岐阜県では2度にわたって非常事態宣言が発出された。その間、学校は休校となり、授業は4月の開始とともにオンライン授業となった。そのため、研究も停滞を余儀なくされ、研究予定は遅れ気味となっている。9月に入り、校内の感染対策を徹底することで、対面授業を段階的に再開することが決定。それにともない研究再開の目処が立ち始めている。 しかし、高等専門学校という教育機関の特性上「教育」が主眼で、本科生の卒業研究や専攻科生の特別研究以外の「研究」は自己研鑽に位置付けられている。そのため、計画の遅れを取り戻すのも一苦労だ。そんな状況でも島本(田中)准教授は「予定どおり、年度内には研究成果報告書をまとめたい」と力強く語っている。今後はさらに実用性のある研究課題に挑戦 島本(田中)准教授は、2006年に環境省から「日本で一番星がきれいに見える場所」として認定された長野県下伊

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