14■■■■■■■■■■■■森真奈美准教授(前列中央)と研究室で学ぶ専攻科、本科の学生たち研究室訪問4仙台高等専門学校 総合工学科森 真奈美 准教授社会人ドクターで学位取得 天田財団の2019年度「一般研究開発助成」に塑性加工分野で採択された仙台高等専門学校 総合工学科の森真奈美准教授(採択時は助教)の研究テーマは「塑性加工を用いて高強度化した生体用Co-Cr-Mo合金における耐食性に及ぼす加工組織の影響」。 森准教授は2005年3月に宮城工業高等専門学校(現・仙台高等専門学校)材料工学科を卒業後、宮城工業高等専門学校 専攻科課程に入学、2007年3月に卒業。同年4月に岩手大学大学院 博士課程前期(修士)に入学、2009年3月に卒業。この間、指導教員の千葉晶彦教授の異動にともない、自身も東北大学 金属材料研究所の特別研究生として研究を行った。卒業後は自動車関連企業に就職、製品に不具合が生じた原因の調査を担当した。仕事には満足していたが、次第に自分の設定した課題に対し「納得できるまで深く取り組みたい」と考えるようになった。 そこで2013年12月、4年半勤務した企業を退社、仙台高等専門学校 マテリアル環境工学科の助教に就任。2014年4月、東北大学大学院 材料システム工学専攻 博士課程後期3年の課程に社会人ドクター枠で入学、同大学 金属材料研究所の千葉晶彦教授の下で、「Co-Cr-Mo合金」の塑性変形挙動と力学特性に関する研究を行った。生体用金属Co-Cr-Mo合金を研究 代表的な生体用金属材料のひとつであるCo-Cr-Mo合金は、塑性加工性は悪いが耐食性や耐摩耗性に優れることから、人工股関節などの整形外科用インプラントに広く使彎症などの脊椎疾患の治療用されている。また、近年は側に用いる脊椎固定器具への応用も進んでおり、生体用金属材料としての重要性がますます増加している。 しかし、2010年には海外の大手医療機器メーカーが製造した同合金を使用した人工股関節の大規模リコールが発生。これは、テーパー加工されたモジュラーネック部の腐食が起因しており、生体用Co-Cr-Mo合金の製品設計における耐食性が、臨床上の問題として顕在化した。 森准教授の研究は、生体毒性の懸念があるNiを含まない合金に窒素を添加することで、冷間加工性が大きく改善することを明らかにする。実際に板厚0.3㎜の薄板を製作した。その後、熱間圧延にも取り組み、加工熱処理による機械的特性の改善についても研究、熱間加工における動的再結晶の発現と結晶粒微細化、積層欠陥の導入による高強度化を明らかにするなど、熱間圧延材の高強度化や室温における塑性変形のメカニズム解明に取り組んだ。そして、熱間鍛造材のASTM規格値の約2倍となる、著しい高強度と高延性を同時に実現することに成功している。チタン合金をはじめとする新たな材料の研究も進めている また、電子顕微鏡観察を組み合わせながら熱間圧延組織を詳細に調べ、生体用Co-Cr-Mo合金の新しい強化手マルテンサイト法を提案するとともに、室温変形においてε相中の格子欠陥の変化が形成する過程を、母相であるγとする新たな視点からの研究成果を明らかにし、2015年3月には千葉教授の下で博士(工学)の学位を取得した。 学位取得後の2015年4月からは脊椎固定用デバイスなど、新たな応用に向けた生体用Co-Cr-Mo合金の加工プロセスの確立と、放射光・中性子回折や電子顕微鏡を利用した変形組織発達過程の解明に取り組むとともに、チタン自分が設定した研究課題に納得するまで深く取り組む生体用Co-Cr-Mo合金の高強度化と耐食性の研究
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