12 「機能創造理工学科というと何を研究する学科か、よくわからないというお話をうかがいます。私たちの学科は人間・環境への支援を基盤とし、新しい物理現象の発見や応用の可能性を考え、そこから新しい機能の創造・創出を探究する学科です。物理学・数学などの理学と、材料・デバイス・電子機器・エネルギー・機械システムなどの工学を融合的に学び、産業技術と自然科学との調和ある発展を推進することを通して、創造性豊かな人材を育成します」。 「そのため、機能創造理工学科では機械工学、電気・電子工学、物理学の3つの学問分野と『エネルギーの創出と利用』『物質の理解と材料・デバイスの創成』『ものづくりとシステムの創造』というキーテーマを結合し、幅広い分野に適応できる専門教育を行っています」。 「私の研究室では主に、加工計測・機能性評価、付加価値のある加工方法・計測・加工メカニズム解析を行っています」(田中准教授)。 田中准教授の研究室には現在、博士課程1名、修士課程M2が3名、学部4年生4名が在籍している。田中秀岳准教授(左)と本研究に参加する修士2年生の中間翔さん(右)研究室訪問3上智大学 理工学部 機能創造理工学科付加価値をもった加工方法の開発に取り組む 天田財団の2019年度「重点研究開発助成(課題研究)」に塑性加工分野で採択された田中秀岳准教授の研究テーマは「CADデータに基づいて作成される熱可塑性炭素繊維セミプレグによるプリフォーム材を用いた順送プレス成形法の開発」。 田中准教授の研究分野は生産工学、加工学、計測工学。研究内容は、加工計測・機能性評価の観点から切削加工および塑性加工分野において、付加価値をもった加工方法の開発や加工メカニズム解析に取り組むことだ。具体的な研究テーマは、①傾斜プラネタリ加工およびオービタル加工によるCFRPの高品位穴あけ、②ダイヤモンドバニシング工具に関する研究、③CADデータに基づいた熱可塑性CFRPの逐次成形による新たな3次元プリンティング、④レプリカ法による工具摩耗評価――などとなっている。機能創造理工学科の特徴 田中准教授は2005年9月に金沢大学で博士号(工学)を取得。2006年3月から2015年3月まで長岡技術科学大学工学部の助教、2015年4月から上智大学 理工学部 機能創造理工学科 准教授に就任、現在に至っている。田中 秀岳 准教授熱可塑性CFRPの短サイクル成形加工技術の研究開発 田中准教授は「たとえば自動車などは衝突安全基準も年々きびしくなっていくことが想定され、従来の設計の改善のみでは、重量の大きな削減の実現は難しいと考えられます。そうした中、新たな軽量化新材料としてCFRP(炭素繊維強化プラスチック)が注目されています。高弾性・高引張強度による高比強度から構造の軽量化が期待されています。CFRPには熱可塑性CFRPと熱硬化性CFRPが存在しています。自動車産業での使用を前提としたハイサイクルでのプレス加工には熱可塑性CFRPが着目されています」。 「熱可塑性CFRPはプレス成形を前提としてLFT-D法などが研究されていますが、不連続繊維のため、既存のプレス成形法では繊維の座屈が発生し、炭素繊維の力学的特性を十分に生かした成形法とは言えません。自動車の構造材にCFRPを適用するには、より短サイクルでの成形が必要に産業技術と自然科学との調和ある発展を推進CFRPの複雑形状の加工を連続繊維・複雑形状で実現する順送プレス成形法
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