天田財団ニュース No9
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2. 高効率なパラメータ同定法の提案将来的な実用的利用を見据え、結晶塑性モデルで必要なパラメータのデータベースを作成するとともに、簡便さと緻密さを両立した新しい結晶塑性パラメータ同定法の提案を行う。3. 結晶塑性モデルの実用的利用結晶塑性モデルを実用的な塑性加工解析に利用する枠組みを構築する。具体的には、プレス成形解析を対象として、実用に資する数値材料試験機としての活用法の確立を第1の目的とし、次世代構成式としての活用を可能とするシステムの構築を第2の目的として取り組む。 実用的な適用事例としては、結晶塑性モデルを数値材料試験機として用いて、初等解析によるV曲げ加工性評価の高効率化・高精度化を試みている。V曲げで実加工上極めて有用である、曲げ加工精度±25′という高い精度を実現することを指標に、種々の材料を対象として現在研究に取り組んでいる。11M2、M1がそれぞれ4名、学部4年生4名の計14名が在籍している。❶❶❷❷❶重点研究開発助成の助成金で購入した試験機/❷実験に取り組む学生たち/❸東京農工大学・桑原研究室より寄贈された二軸負荷試験機❸❸資源エネルギープロセス学の学理を追求 浜准教授は2004年3月に早稲田大学大学院 理工学研究科で博士号(工学)を取得後、同年9月まで同大学院 理工学研究科の客員講師(専任扱い)を務めた。その後、同年10月から京都大学大学院 エネルギー科学研究科 エネルギー応用科学専攻 資源エネルギー講座 資源エネルギープロセス学分野を担当する宅田裕彦教授のもとで教育・研究に携わる。2010年1月まで同助手(助教)、2010年2月に准教授に昇任、現在に至っている。 同分野では、素材を製品に加工する際に消費するエネルギーに関して、資源とエネルギーの全体的なプロセスを計算物理学に基づくシミュレーションを中心として理論的、かつ実用的な観点から検討する「資源エネルギープロセス学」の学理を追求するための研究に従事している。 研究室には現在、宅田教授、浜准教授以下、修士課程ターニングポイントとなった出会い この道を選択したターニングポイントについて浜准教授は以下のように語っている。 「早稲田大学で浅川基男先生の研究室に配属され、高張力鋼板の『スプリングバックと割れ発生』に関する研究に取り組みました。ここで、実験だけでなく弾塑性有限要素法に関する勉強にも取り組み、有限要素法の基礎から弾塑性力学、非線形連続体力学、そして非線形有限要素法を勉強しました。修士2年目で板材成形シミュレーションに関する研究を理化学研究所で行う機会が得られ、牧野内昭武先生の研究室で、板材成形シミュレーションのための弾塑性有限要素法プログラムを学びました。そして、プログラムを拡張してチューブハイドロフォーミング解析プログラムを開発するテーマで修士論文を書き上げました」。 「博士課程へ進学した頃、牧野内先生が新しい形状モデリング手法と、それを援用した数値解析技術の開発に関するプロジェクトを立ち上げ、私は加工成形シミュレーションチームに所属しました。チームリーダーだったChristian Teodosiu先生(当時パリ13大学名誉教授)の下で、チューブハイドロフォーミングに関する研究と並行して、新しい形状モデリング手法を用いた、板材成形シミュレーションにおける接触解析技術について研究する機会にも恵まれました」。 「博士課程修了後は縁あって、板材成形シミュレーションによる延性破壊予測に関する研究を進めておられた京都大学の宅田裕彦先生の研究室で、現在も引き続きお世話になっています。こうした先生方との出会いで今日の私があります。これからもこうした出会いを大切にして、研究活動に邁進していきたい」。

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